里山倶楽部自然農場日記8月号 N0139

2020.7.23


久しぶりの青空

今年の梅雨も大変な事になってしまいました。被災された方々には心からお見舞い申し上げます。

一昨年の西日本豪雨では河南町も大きな被害を受けました。川からあふれた水が別の川を作り濁流が田んぼの真ん中を走っていく様は忘れようにも忘れられません。普段は小さな小川があのように豹変するのを見て、自然の底力をまざまざと思い知らされました。その光景を見た時は自分の目が信じられず、これは地獄だと錯覚したほどです。もちろん田んぼだけでなく土砂崩れによる道路の崩壊等たくさんの災害が重なりました。当然復旧には時間がかかり平常に戻るのに1年くらいかかったように記憶しています。復旧工事が終わり田植えが出来るようになったのに、田植えをせずそのまま放棄田になってしまう例がたくさんみられました。この災害を契機にお米作りを止めてしまったのです。本当に残念な事です。

 

今回の九州の災害は河南町どころではありませんね。川なのか田んぼなのか分からない。水の中にもぐってしまった稲は全滅でしょう。特に熊本県や宮崎県は有機農業の盛んな所。先日、自然食品店「キャロット」の店長さんとお話してたら、熊本の有機野菜は全滅状態だそうです。彼が言うには「この災害を何とか乗り越えて立ち直って欲しい。この災害により有機農家が減ってしまう事が一番怖い事だ」と言ってました。さらに曰く「最近有機農家が減ってきているように感じる。以前はよく有機農家で野菜を仕入れて欲しいと店に来られる方がちょくちょくいたが、最近はそういう人がほとんどいない」とのこと。

この話を聞くとどうしても日本の農家の立場の弱さを感じざるを得ないのです。その中でも特に有機農家は厳しい。まさに孤立無援の状態で、唯一己の持っている生き方を金科玉条のごとく守り抱いて歯を食いしばって頑張っているのが実情です。一番分かりやすい例をあげましょう。

有機野菜であるという国からのお墨付きとして「有機JAS」制度というのがあります。私も以前三重県で農業していた時にこの制度を取得しました。そもそもこの制度が出来たのは、消費者から、「低農薬や、減農薬、無農薬等々いろんな表示があって分かりにくいから何が本当の有機野菜なのか分かるようにして欲しい」という要望が上がり、また欧米では早くからこの制度を採用していることから当時の農林省がしぶしぶ?立ち上げた制度なのです。取得してみて驚きました。何がって・・・有機農家のメリットはただ一つしかないのです。それはスーパーや、百貨店、有機野菜を専門に扱う流通業者等に有利に?(もちろん有利の保証はない)出荷できるだけなのです。資格を取得するまでの経費、取得した後の年1回の検査費用(国に代わって検査する認定団体の交通費から宿泊代)、JASのシールからダンボール代(JAS制度では野菜を入れるダンボールは新しいものでなければならない)等々何から何まで全て農家負担なのです。取得してからすぐ、こんな制度では広まらないだろうなと想像しました。そうなんです。国には有機農家を育てる意欲なぞ全くないのです。せめて有機JASを取得した農家には何らかの経済的支援があるべきです。

2006年に「有機農業推進法」という法律がツルネンさんという当時の民主党の議員さんの後押しで成立しました。立法された当時は各都道府県単位でこの法律をどのように生かすか議論されました。ところが一向に具体的な案が定まらずいつの間にか雲散霧消してしまいました。このようになっている原因の一つに有機農家の側にも責任があります。もともと有機農家の農業のやり方は千差万別で、しかも個人個人が我が道を行くという頑固一徹の輩ばかりなのです。行政の方にはそれほど熱意がなく、農家側からもまとまった意見も出されず、結局何も新しい動きを出せないまま現在に至っています。まだ「有機農業推進法」は生きているのですが・・・

今月は災害の話から有機農家の置かれている現状の話になってしまいました。とりとめもないお話で申し訳ありませんでした。

 

かずみの農感記

 

先日の暴風雨で農場のなすやピーマンが沢山倒れてしまいました。一部折れてしまったものもありますが、今は立派に立ち直ってたくさんの実をつけています。

自然と向き合う力強さに天晴れです!

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